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「シュウィンゲン―スイスの根っこ:その2」

16 4月
2011年4月16日

シュウィンゲン大会は、スポーツとしてももちろんだが、その雰囲気や競技以外の部分も興味深い。取り組みの最中に折りに触れて吹かれるアルプホルンも、地元のヨーデルクラブが歌うナトゥアヨーデルNaturjodel(直訳すると「自然ヨーデル」となるが、要はメロディだけで歌詞がないヨーデル本来の姿)も、ファーネンシュウィンゲンFahnenschwingenと呼ばれる「旗の舞」の披露も、すべて観光目的の出し物ではなく伝統行事の必須材料としてそこにある。

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スイスの民族楽器のひとつである、鍵盤の代わりに何十個もの丸いボタンを操作しで演奏する小型のアコーディオン「シュヴィーツァーオーゲリSchwyzerörgeli」を用いた民俗音楽を披露するグループも見られ、素朴なスイス本来の姿を垣間見ることもできる。

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会場併設の飲食施設では焼きソーセージやギプフェリと呼ばれる各種クロワッサン(クロワッサンはスイスでは朝食や軽食として大変一般的)やカフェ・シュナップスというアルコールがたっぷりと入ったコーヒーなどを楽しむこともできるが、シュウィンゲン大会の飲食のメインは昼食に頂く「シュパッツSpatz」と呼ばれる料理。シュパッツというのはドイツ語でスズメのことなのだが、これはスズメ肉料理ではなく牛スジ肉と野菜(主にインゲン)を煮込んだポトフのこと。料理名の由来や出典はスイス人自身もよく知らないというこのシュパッツだが、スイスでは兵役の際の軍隊料理としても食される超ローカルメニューだ。会場の巨大飲食テントにほぼ全ての観客が一堂に会してこのシュパッツを頂く光景は圧巻。
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「振舞い料理」ではないのでもちろん有料だが、肉や野菜はもちろん付け合せのジャガイモのお代わりも充分に用意されているのでおなかが一杯になることは間違いない。

シュウィンゲンは毎年3月下旬ぐらいから各地で大会が開催されている。それに合わせるかの如く、今年の3月中旬からこちらではシュウィンゲンをテーマにした新作ドキュメンタリー映画「ホーゼルップフHoselupf」(ホーゼルップフとはシュウィンゲンを意味する別の言葉であるホーゼンルップフHosenlupfをスイス訛りで発音したもの)が公開されている。日本公開の有無は現在未定だが、登場キャストの一人であるシュウィンガーのクリスティアン・シュトゥッキChristian Stucki(本業はトラックの運転手)が日本の相撲部屋で稽古をした際のシーンも含まれており、日本で公開されたら日本人にとっても興味深いものになるだろう。
春から既に始まっているシュウィンゲンシーズンだが、ハイシーズンはやはり初夏から秋にかけてだ。個人的に特にお勧めなのは東スイス地方の名峰センティスSäntisの麓シュウェグアルプSchwägalpで開催されるもの(2011年は8月21日開催予定)だが、今年は9月4日からベルン州インターラーケンで200年以上の歴史があるウンシュプンネン・シュウィンゲトが開催される。会場には入場料やチケットが不要なパブリックビューイングゾーンもあるので、この時期にインターラーケンに行かれる方はお見逃しなく。

2011年のシュウィンゲン大会開催スケジュール一覧(連邦シュウィンゲン連盟HP内)
www.esv.ch/feste-anlaesse-aktiv.php
ウンシュプンネン・シュウィンゲトHP
www.unspunnen-schwinget.ch
映画「ホーゼルップフHoselupf」公式HP
www.hoselupf-derfilm.ch

「シュウィンゲン―スイスの根っこ:その1」

08 4月
2011年4月8日

スイスの国技にあたるスポーツとは、スキーでもサッカーでも馬術でもなくシュウィンゲンSchwingenと呼ばれるお相撲だ。
主にドイツ語圏のスイスで盛んなこのシュウィンゲン、日本の相撲と比較して似ている部分は、例えばスポーツであると同時に伝統行事でもあること、シュウィンガーケーニックSchwingerkoenig(シュウィンゲン王者、スイス相撲の横綱のこと)がスポーツ選手としてはもちろん人間としても尊敬と憧れの対象であること(なので競技以外の場面でも王者の発言や行動にはそれなりのものが求められる)など。絶対的な違いはシュウィンガーSchwinger(力士)がプロではないこと(全員が通常は大工さんだったり農夫だったりする「アマチュア」だ)と、成績優秀者や大会の優勝者には名誉と地位を象徴する冠の他に大変実用的な商品(大会のスポンサーにもよるが、車のタイヤセットとか電動のこぎりとか巨大なカウベルとか)が出るものの、賞金は出ないことだ。3年に1度開催される全国大会の優勝者商品は、何と雄牛!だ。

シュウィンゲンの試合は基本的に屋外で行われ、シュウィンガーは「まわし」ではなく特殊な形状の皮製半ズボンを着用して試合に臨む。

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取り組みはおが屑を円形に敷いた闘技場の上でシュウィンガー同士が組み合った状態からスタートし、どちらかのシュウィンガーの背面側の両肩がおが屑面に着くことで勝敗が決着する。闘技リングの外に押し出したりただ倒すだけではダメなのだ。取り組みには時間制限があり、時間内に両肩が着かない場合は引き分けという結果もある。さらに「魅力的な試合だったか」など戦い方による複雑な得点制度(敗者にも得点が付く)もあるので、単純な勝ち負けだけでトーナメントが進まない所なども興味深い。

シュウィンゲンの大会会場では、相撲闘技場の側でシュタインシュトーセンSteinstossenと呼ばれる「石投げ競技」もセットで行われるのが普通だ。

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ベルン州のインターラーケンでは200年以上の歴史と伝統を誇る「ウンシュプンネン・シュウィンゲトUnspunnen Schwinget」と呼ばれる大会があり、この大会のシュタインシュトーセンでは83.5kgもの重さがあるウンシュプンネン・シュタインUnspunnensteinという名前の(これまた歴史ある)特別な石が使われるのだが、他の大会でも基本的には40kg以上ある石が用いられ、これを屈強な男性が担ぎ上げてえいやーっ!と投げ飛ばしその飛距離を競うのだ。ちなみに現在までの最高記録は、先述のウンシュプンネン・シュタインで4メートル11センチ。大男がおが屑にまみれるシュウィンゲンも力任せに石を投げ飛ばすシュタインシュトーセンも、お世辞にも洗練されているとは言い難い行事だが、スイスが本来どういう性格の国であるかを象徴するひとつの例でもある。

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