〜「運慶」を祖と仰ぐ800年続く鎌倉彫の名家〜 後藤家と巡る鎌倉彫の現在と昔体験ツアー<博古堂店主・後藤尚子さんと巡る>仏師集団・慶派を本流に 技と誇りを刻み続ける鎌倉彫の美の世界

鎌倉幕府に請われて活躍した慶派仏師の流れを汲む鎌倉彫。
その一刀、その塗りに脈々と研鑽を重ねた匠たちの技巧が宿ります。
鶴岡八幡宮・三の鳥居脇に佇む瓦屋根の「博古堂」。
軒先にかかる「鎌倉仏師 後藤家二十八代」の銘には匠の歴史と誇りを感じます。

旅の案内人は、「鎌倉彫会館」の館長であり2020年に博古堂5代目店主を継いだ後藤 尚子(ごとう なおこ)さん。
鎌倉彫を今に伝える後藤家の名跡とそれに関わる匠たちの未来を担っています。

「鎌倉国宝館」「博古堂」「鎌倉彫会館」を歩けばその奥深さが覗けるでしょう。
さぁ、悠久の世界へタイムトリップ!

開店は1900年、「博古堂」から始まる鎌倉彫の旅

鎌倉文化の一端を代表する「鎌倉彫」。その源流は、鎌倉時代に遡ります。
禅宗寺院の造営が盛んに行われたその時代、奈良から招いた慶派の仏師たちが仏像・仏具の造作を引き受けました。当時の中国(宗)より輸入された彫漆器などにも影響されながら、時代とともに和様化が進みました。その中でも、写実的で力強い作風で知られる仏師・運慶を祖と仰ぎ、彫りと塗りの技術を継承し続けているのが後藤家です。

その後藤家が1900年(明治33)、鶴岡八幡宮の鳥居脇に構えた「博古堂」が、この旅のスタート。博古堂は後藤 齋宮(ごとう いつき)を初代とし、後藤 尚子さんが2020年に5代目として店主を継承しました。後藤 齋宮は、明治初めの廃仏毀釈で衰退の憂き目にあった鎌倉彫を三橋 鎌山(みつはし けんざん)と並び再興した仏師であり、その息子、2代目・運久と共に、今へ至る現代鎌倉彫の基礎を固めました。

「実は当代ごとに作風が違うんですよ」と尚子さん。戦後、株式会社に改組した博古堂を率いる3代目・俊太郎さんは、椿や柘榴、獅子といった伝統柄を、彫刻図案として深彫りに表現した作品が代表作に、4代目・圭子さんは、屈輪唐草文様を大胆にアレンジしたモダンな作品や放射線状に伸びる彫刻が美しい作品が好評を博し、博古堂の製品は海外の展覧会でも注目を集めていると聞きます。

「そうなんです、博古堂に並べているのはあくまで商品。お客さまの用途にあった物をその時代に合わせて生み出してきました。そういう意味でも5代目としてどんな物が提示できるのか、お客さまから期待されていると思います」という尚子さんの言葉に、強い決意を感じました。店頭の品物にはすべて分かりやすく値段表示をしていて、これも日常で使いやすい物を選んでいただきたいという意思の表れなのでしょう。そのことを確かめてみると、尚子さんはにっこりと笑顔で応えてくれました。

漆器の器は軽く、水洗いもできます。工程に手間がかかる分だけ少々高価ですが、普段使いで気楽に扱えて、しかも長持ちするので助かります。愛着が湧いた器の修繕は工房に持ち込めますからメンテナンスも万全です。一生モノと付き合える、それが鎌倉彫なのではないでしょうか。

鎌倉彫のルーツを訪ねて国宝館へ。鎌倉一円の仏像造形に驚き

後藤さんの案内で最初に訪れる場所は、鶴岡八幡宮の境内にある「鎌倉国宝館」です。
鎌倉国宝館は、鎌倉社寺の仏像や⽂化財が⼀堂に保管・展⽰されている市⽴博物館で、その名の通り、国宝・重要⽂化財を多数鑑賞することができます。

本館建物は高床式の校倉⾵建築で国登録有形⽂化財。関東大震災による社寺の被災を教訓として大切な文化遺産を保護することと、それらを容易に見学できることを目的として、1928年(昭和3)に開館しました。そうした方針から収蔵品は、鎌倉一円の社寺から寄託された彫刻・絵画が中心になっています。

須弥壇や硯台といった工芸品、絵巻や書、肉筆の浮世絵なども見応えがありますが、ここで注目したいのは常設展示の「鎌倉の仏像」。ガラスケースを挟まず、薬師三尊や十二神将立像などを目の前で鑑賞することができます。ダイナミックかつ繊細な仏師の造形を見れば、鎌倉彫の精神性に通じるものがあると納得できるでしょう。

博古堂、鎌倉彫資料館の名品を眺めて、いよいよ鎌倉彫体験

鎌倉彫のルーツを学んだ後は、尚子さんが店主を務める「博古堂」と「鎌倉彫会館」での作品鑑賞です。道すがら尚子さんに、先代で実姉の圭子さんから長く歴史ある博古堂を継いだことで、どんな鎌倉彫でありたいと考えていますか?とたずねてみました。

「身近に工房があって職人たちが常に周りにいる環境だったので、私の家はお盆屋さんだと思っていたんですよ」と笑顔の尚子さん。確かに老舗の責任は重いけれど、と前置きした上で「木を彫ってできた凹凸に漆を塗る鎌倉彫は、長く使えば使うほど手に馴染み、漆のつやも出て、味わいが深まってきます。だから、現代のインテリアやファッションに合う感性を常に磨きつつも、お客さまから信頼されてきた確かな品質を変わらずに届けたい」と話します。

作品鑑賞後は、鎌倉彫のコースターを自分で彫ってみる楽しい体験の時間です。葡萄か椿が選べる鎌倉彫の柄は、このレッスンのために尚子さんがオリジナルでデザインしたもの。コンパクトな菱形の中に、芸大で絵画を学ばれた尚子さんの上品で現代的な作風が現れています。伝統の薬研彫りを習いながら1時間半も経てば、彫刻が仕上がっているはず。その後、職人の手による塗りの工程を加えて、世界に1つ、貴方だけの作品が仕上がります。

美しい鎌倉彫の器でいただく「精進・刻御膳(ときごぜん)」

最後は、鎌倉彫会館1階のカフェ「倶利(ぐり)」で鎌倉らしい精進料理をいただきましょう。「精進・刻御膳(ときごぜん)」と名がついたお膳には、近くの鎌倉市農協連即売所(通称:レンバイ)で仕入れた朝採れの鎌倉野菜がたっぷり。精進だしをベースにあっさり仕上げられ、具材の色と味の輪郭が際立っています。よくよく見れば、木の器はすべて鎌倉彫のよう。

「鎌倉彫の器を実際に使っていただきたくて。けんちん汁のような熱い汁ものでも外に熱が伝わらず薄くて軽い。器ごと持てるでしょう?箸も盆も鎌倉彫ですよ」と尚子さんに説明いただきました。鎌倉彫のことを深く知った後に手にする鎌倉彫は、さらに美しく、愛おしく思えてきます。

使い続けたくなるホンモノとは何か、鎌倉彫に見る用の美

最初に訪れた時より明らかに、鎌倉彫の魅力に引き込まれている自分に気づきます。見れば見るほど、知れば知るほど、その奥深さには際限がありません。物の存在が、それを持つ人の意識や姿勢を正してくれる、そんな気持ちにさせてくれます。いいものとは多くを語りません。時間を経るたびに気がつくことが多くなります。

「使えば使うほど、美しい表情が現れてくるのが鎌倉彫のいいところ。日々の生活の中で使い込まれた時間が、作品をより美しく変えてくれるのです」と言う尚子さん。

博古堂や、鎌倉彫会館の1階でカフェと併設するショップでは、鎌倉彫の商品を購入することができます。自分の暮らしにどんなデザインが合うのか、これを機会に相談するのもいいかもしれませんね。これはと思うものに出逢えたら、長く使い込んでみたいものです。

このツアーは現在企画中です。

今後実施予定です。

    今後も鎌倉藤沢の地元ならではのツアー情報等をお届けします。

    ご希望の方は、メールアドレスを入力いただければ情報をお送りします。