〜茶の湯を通して季節の移ろいを愉しむ〜 <おもてなしの達人・青木さんご夫妻が誘う>茶の湯と人力車で移ろいを感じる、風雅に満ちた鎌倉時間の1日

のれんに染めた笹りんどう。ほのかに漂う茶の香りに誘われて「有風亭」へ。
茶の湯の手ほどき受けながら、色鮮やかな松花堂弁当に舌鼓。
女将の歓待に後ろ髪を引かれつつ、人力車で出かけましょう。
風に吹かれて鎌倉時間をたっぷりと。時間を忘れて、お楽しみあれ。

そんな口上風の紹介がよく似合う旅かもしれません。
旅の案内人は、「有風亭」の車夫・青木 登(あおき のぼる)さんと女将・青木 いづみさんご夫妻です。
お2人とも、鎌倉の街を隅まで知り尽くす、おもてなしの達人です。

もともと、鎌倉が好きで自ら通いつめた旅人であったというお2人。
地元からの信頼も厚く、いつしか鎌倉の風景と称されるまでになりました。
さぁ、和を嗜む時間に浸りましょう。

茶の湯をカジュアルに楽しめる和の殿堂「茶房 有風亭」

鶴岡八幡宮から北鎌倉へ抜ける横浜鎌倉線(神奈川県道21号線)から路地に入った閑静な場所に、観光客に限らず、地元の大人や子どもも通う茶室があることをご存知でしょうか。

営んでいるのは、鎌倉の風景と慕われ愛される車夫・青木 登さんの奥様、いづみさん。卒業旅行の行き先に鎌倉を選び、和装で訪れたのが最初といういづみさんは、そこから足しげく通っているうち、すっかり鎌倉のとりこになったと言います。青木さんとの馴れ初めも、実は人力車の車夫とお客の関係でした。青木さんは、あの当時に和装で旅する女性が珍しくて、とその出逢いを振り返ります。

1984年に観光人力車を鎌倉で初めて開業した青木さんが、鎌倉に通ういづみさんと結婚後、「和の魅力を気軽に楽しむ」をコンセプトにして2012年にオープンしたのが「茶房 有風亭」です。以来、この場所から茶房と人力車の2輪車で和の魅力を伝え続けています。女将・いづみさん(以下略、女将)に、鎌倉の魅力をたずねてみました。

「風や太陽の光、虫や鳥のさえずり……、自然あふれる鎌倉は、春夏秋冬、毎日違う彩りをみせてくれます。二度と同じ時はない、その日だけの鎌倉の景色と雰囲気がたまらなく好きなんです」と女将が答えます。ここを訪れるお客さまには、そういう楽しみがあることを知って欲しいんですね、と。

「茶房 有風亭」には、時計がどこにも見当たりません。女将の導く幽玄の世界に時を忘れる、というお客さまも多いそう。地元の子どもにもお茶を教えていることもあり、物腰は柔らかで、先生然とした態度を微塵も出さないところに、女将の懐の深さを感じます。

鎌倉・創作和食「近藤」の特別懐石をいただく

「茶房 有風亭」の門にかかる若草色の美しいのれんには、ササリンドウに丸い円の紋章が描かれています。円を縁に重ね、リンドウの咲く鎌倉で、多くの方とのご縁がありますようにと願いを込めているそうです。女将の案内で、茶の湯体験へと向かいましょう。

床の間には掛け軸が2つ飾られていたり、くるっと輪になった結び柳の演出などは、訪れた時が1月だったから。「茶席ではお招きする方を最上級の心でもてなしたい」という女将の言葉通り、さりげない工夫が見て取れます。

季節の香りを浮かべた茶釜の汲み出しに続き、金箔入り食前酒で喉を潤します。初めての茶席だとやはり緊張しますが、飲み物が喉を通ると不思議と気持ちも穏やかになります。

いよいよ、鎌倉創作和食の特別懐石「松花堂弁当」の登場です。煮物、焼物が彩りよく配された料理は、見た目が美しく、食欲をかきたてられますね。1つ、また1つと箸を口に運ぶたびに、胃も心もすっかりほぐれていきました。

濃茶、薄茶の違いや茶菓子の説明など 女将との話に花が咲く

鎌倉の旬がぎゅっとつまった懐石を堪能したら、次は茶席を楽しみます。

この茶房では女将のお点前を見ながら、お茶をいただきます。使用する抹茶は京都宇治の「丸久小山園」から、濃茶・薄茶で銘柄を厳選して使用するとのこと。練った濃茶は色深く、香りがとても上品です。季節の上生菓子とともにいただきましょう。懐石でお腹を満たしていますが、甘いものは別腹、幸せが体中に広がる心地です。

濃茶の次に、薄茶と干菓子が供されます。干菓子は、希少な和三宝(純度100パーセントの和三盆)と皇室御用達「緑寿庵清水」の金平糖。知らず知らずのうちに生活の中に生きている和の習わしなども交えて女将に解説をいただきながら、茶の湯を楽しく体験できました。

女将によると「在釜(ざいふ)」という言葉には往来に向けて「いつでも炉に釜がかかってますよ」と茶会を知らせる意味があるそう。「茶房 有風亭」でも、そうした気構えをもって日々の茶の湯を開いていると言います。「お茶には流派がありますが、まずは茶席に親しんで欲しいと思って」と、女将はやさしい笑顔で語ってくれました。

この道38年のレジェンド人力車に背をあずけて行く鎌倉の街

茶席を体験した後は、現役車夫として国内最長齢、青木 登さんの「人力車体験」です。雨の日も、寒い雪の日もトレーニングを欠かさないという、今年で車夫歴38年目の青木さん。「今日さぼっても明日はきっと動ける。でも来年の今日動けなくなるのが怖い」と、日々のメンテナンスを続けています。

というのも、鎌倉の街は山と海との狭間を生かした地形にあり、繁華街を外れると起伏の多い街でもあります。健脚に自信がある人か地元の人以外は、バスルートを外れた場所へは行かないでしょう。そうした場所へ行く時に重宝するのが人力車です。青木さんの慣れた足運びによって、乗り心地よく、軽快に目的地へと連れて行ってくれます。

1984年に鎌倉初の観光人力車「有風亭」を創業して以来、今なお生涯現役を掲げて鎌倉の街を走る青木さんを称して「あなたは鎌倉の風景の一部だ」とも言われています。

「人力車に飾る提灯や傘などは、信頼のある店でちゃんとした和紙を使って、職人が一から丁寧に作った本物だけしか使わない。客引きも絶対しないよ、それはもう創業当初からの思い。長くやっていると、お客さまの人生と一緒に年を重ねてるんだなって実感するんですよ。親子二代で花嫁道中に使ってくれたり、お祖母さまの花道に好きな桜を見せてあげたいという家族の願いに応えたり、この商売を続けているといろんなことがある。それぞれの思い出に私の人力車がいると思うと、本当に嬉しくなっちゃうんだよね」と青木さん。

その言葉を聞いていて、あぁ、人それぞれの鎌倉の風景に青木さんがいるのだなと思いました。人力車を曳く前は、自身もやはり鎌倉を訪れる旅人の1人だったという青木さん。女将と二人三脚になった「有風亭」は、だからこそ旅人がくつろげる空間として“おもてなし”にあふれているのでしょう。

おもてなしに触れて和の心を知る。通ってわかる鎌倉時間

「茶道では、主人が客人のためを思って色々と工夫をします。でも、普通はこれは何、それは何と細かく説明しません。遊び心を説明すると興が削がれるから口では何にも言わないの。わかっている人だけわかればいい、客人にとっては謎解きみたいなその時間も、茶の湯のとても楽しい一面です。だから私は、わからないで帰してしまうのはもったいない!と思って結局、教えちゃうんですけどね。はい、じゃあ金平糖、食べてみて」……と、女将が続けます。
「この金平糖の価値を知って楽しむのと、知らずに楽しむのとでは感動が違うでしょ」。こんなやり取りが人の心を和ませるのでしょう。

楽しい茶席に加えて、その日、見頃の場所に案内してくれる人力車。一期一会の旅もよし、長く深く付き合うのもよし、それはお客さまの気分次第だと青木さんの背中が語りかけてきます。行き先や目的を決めず思うままに任せてみる、自分の枠を外してみる、そんな旅もまた正解なのだと感じました。鎌倉で過ごす時間には、それを許してくれる暖かみがあります。

このツアーは現在企画中です。

今後実施予定です。

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