ソチミルコのチィナンパ


メキシコシティの南部のソチミルコは、メキシコシティの中心部の歴史地区と一緒に世界遺産である。
ソチミルコと言うと、ベニス的で、運河を手漕ぎの小船で舟遊びという事で観光地としてみんなが行くソチミルコである。
大都会の片隅ののんびりした雰囲気の、メキシコ的雰囲気の舟遊びというのもいい。

だが、世界遺産としてのソチミルコは、メキシコ盆地にわずかに残った湖の名残と、もともとの大きな湖の人工の浮き島で行われていたチィナンパ栽培という多収穫な農業が今も行われているという事にあるのだ。

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写真の説明:ここは、ソチミルコでも、観光舟の行かない地区。

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写真の説明:水路の周りでチィナンパ栽培が行われている。

スペインの侵略以前、今のメキシコシティの中心部ソカロの場所にアステカ王国が栄えていた。
メキシコシティのある盆地全体に5つの湖が広がり、その一つテスココ湖の小さな島テノチィティトゥランが、大アステカ王国の地であった。

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写真の説明:アステカ王国の都の想像絵 島の周りは人工の浮き島

これらの湖のあちこちで、チィナンパという浮き島の畑耕作が行われていた。
このチィナンパの浮き島の構造は、木で筏を作り、その上に湖の底の泥をのせる。
その筏の周りにahuejoteなどの木を植えた。
木を植える事で木が根を張り、浮き島がしっかりする。
湖の泥は豊かな養分を含んでいるので、豊かな農地となる。
普通の土地では、雨季の時期(半年)しか農業ができないので主食であるトウモロコシも一年に一回の収穫しかできないが、このチィナンパ方式だと、湖の水をかける事により、また、湖の豊かな泥を積む事により土地の再生を行い、一年につまり3回ものトウモロコシ栽培が可能だったというものでる。
それは多収穫な集約農業であったといえる。

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写真の説明:今は浮き島ではないが、島の周りは木の杭がされたりや木が植えられている。

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写真の説明:今は乾季なので、畑の灌漑をソチミルコの水をポンプでかけてしている。

機会があり、ソチミルコでそのチィナンパ栽培をやっているのを、見学させてもらった。

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実家が農家であり、また自分でも小さな家庭菜園をやっている私としては、興味深かったが、同時に今のソチミルコの抱える問題も深刻である事を知った。

ソチミルコには、もともと湧き水がでる泉があり、その湧き水がソチミルコ湖の水の元であったが、
その泉の水は、大都会メキシコシティの水道の一部として、利用されるようになり、その代わりに使用済みの水を洗浄してソチミルコ湖に返すという。
また、メキシコシティの地盤沈下もソチミルコに大きな弊害をもたらしている。

アステカ大国が栄えていた時代と今の時代では圧倒的に人口に違い(数十万の人口から2千万に近い人口の差)があるのだから、
人が住むことによる自然破壊や公害は当然おこる。

ソチミルコの湖のもともとの動物植物は瀕死や絶滅の危機であり、外来種が幅を利かせている。
世界でも唯一というサンショウウオの一種アホロテ(ウーパールーパ)は、外来の魚に食われて、もう、自然の環境では生存していないだろうといわれている。
保護のための生殖飼育が行われているのみ。

ソチミルコの木も昔はahuejoteの木が植えられていたが、今は外来種の兎に角成長が早いという理由だけでメキシコのあちこちに植えられているユーカリの木がソチミルコも幅をきかせている。
ユーカリの木は、このソチミルコの環境で害はあっても利はないのに、隣の土地で植えられているのに、人様の土地だから、迷惑だけど、文句を言えないと、訪ねたチナンパの農家の人がこぼしていた。

ソチミルコの人工の島は、かつてはもちろん浮き島であったであろうが、今は浮き島ではないが、そこに多くの人が住み、舟で出入りをして、畑も耕している訳である。
人工の島に住む人たちの下水はどうなっているの?
下水道はあるのだが、地盤沈下で、機能しなくなっていて、人々は湖に流すようになったと。湖の汚染問題である。

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写真の説明:民家の多くある地区は、水が特に濁っている。各家の前には自家用舟が止めてある。

ソチミルコでの観光の舟遊びで行くところはほんのわずかで、大体手漕ぎ舟で1時間くらいで往復するだけだが(3時間コースくらいのもあるが)、実にソチミルコの水路の長さは180キロもある。
その水路も場所によって、地盤沈下のため高さに差があり、ダム方式で水の調整を行っているそうだ。
生活使用済み水、つまり下水の水を洗浄してソチミルコ湖に給水しているわけだ、もちろん雨季の雨水もソチミルコにとって、恵みの水であるだろう。
昔メキシコ盆地にあった大きな5つの湖には、山からのいくつもの川が流れ、湖を潤していたのであろうが、その多くの川はなくなり、湖もなくなった。
そして、その湖の名残のソチミルコも水の水位がさがり、乾くかもしれない危惧。

自然破壊、環境汚染や湖が干上がるかも?の現実がある。
その真実、現実を土地の人が認識して、対処していかないと、と、案内してくれた人が言った。
そしてもちろん、ソチミルコの汚染が進んだり、ソチミルコが干上がってしまったら、世界遺産認定も取り消しだ。
個人の今日のエゴをやめて、未来を見る目を持つ事が、環境汚染のないソチミルコ、ソチミルコを永遠に残こす事でもあるのだろう。

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