メキシコの伝統的腰機織りとそれに学び独自の織物を作る日本女性鈴木かつ子さん
メキシコやグァテマラの民芸品の中に先スペイン期時代からの先住民の作る伝統的な素晴らしい織物がある。
地方に住むインディヘナの人々は何日も何日も大変な時間と労力をかけて作った織物や刺繍を施した民族衣装を今でも着ている人も多い。
それは、2000年以上もの昔からの彼らの祖先から、祖母、母、子、孫へと伝えられた工芸である。 それは、単に時間をかけて作ったというだけではない、近代的な機織がないからという事ではない、 決して、決して、近代的な織り機では作る事ができない素晴らしい繊細な独特な織物が出来るからである。
写真説明 ;腰機織りの様子 人類学博物館民族学資料より
写真説明: 先住民の作る織物の作品 人類学博物館 民族学資料より
そのメキシコの伝統的な腰機織り(テラール デ シントゥーラ)に魅了された鈴木かつ子さんは、 15年前、メキシコ、グァテマラの先住民の女性たちに学び、そして今、テーラル デ シントゥーラだからこそ、 いや、テーラル デ シントゥーラでしかできない独特の織物、また彼女自身が編み出した手法などと、 それに、素材も、メキシコやグァテマラのインディヘナの人々が使う綿や羊毛だけでなく、アルパカ、絹、麻、さらに、最新の紡績技術で作られた紙加工糸などを使い、 色も藍染、貝紫染め、茶綿、アルパカの自然色の色などなどで、彼女独特の素晴らしい織物を、 メキシコ、モレロス州のテポストラン村で、日々、腰機織りで織り続けている。
鈴木かつ子さんの織物展覧会が、メキシコシティーで開催され、見に行った。 それは、メキシコやグァテマラの先住民に学んだ技術であるだろうが、メキシコの織物ではなく、まさに、日本女性の手によって作られたという事をひしひし感じさせる作品である。 日本人女性の色感覚、繊細さ、一本一本の細い糸を丹念に扱い仕上げられた作品である。 作品というのは、作者の人柄が表れるというが、まさにその作品は鈴木かつ子さんの人柄を感じさせる。
彼女の言葉、「インディヘナの人々のテラール デ シントゥーラは、彼女らの日々の営みで彼女達のアイデンティティーに繋がる大切な仕事。 私は、現代のテラール デ シントゥーラの中に自分のアイデンティティーを探していきます。」と。
展覧会で、メキシコの女性に話しかけられた。 彼女はかつ子さんにお世話になってるんですよという。 彼女は先住民、インディヘナ後援団体とかで、鈴木かつ子さんが、その応援をしてくれると。
鈴木かつ子さんは、メキシコの地で、孤立もくもくと機を織っているわけでは決してなく、メキシコの地の現地の人々とも深く関わり、 メキシコでメキシコを応援する人でもあるんだと知った。
日本でも展覧会を開いたそうだけれど、またそんなチャンスがあったら、是非、彼女鈴木かつ子氏の作品を見て欲しい。 そして、また彼女の作品が、メキシコやグァテマラなどのインディヘナの伝統工芸を世界に伝える架け橋になってゆくだろう事を思う。